HANABI/Mr.Children 徹底考察

Mr.ChildrenHANABI

ドラマチックなストーリー展開を読み解く

 

今回は、2008年9月3日にリリースされたMr.Children33枚目のシングル「HANABI」の歌詞を考察していきます。

 

1.題名「HANABI」の意味

まずは、題名である「HANABI」が表すものを考えていきましょう。

まず思い浮かぶのは、線香花火、打ち上げ花火などの「花火」です。

夏の代名詞であり、賑やかなお祭りや華やかなイメージがありますが、一瞬で消えてしまう美しい光はどこか儚さを感じさせます。

また、この曲の題名は「離日(離れる日)」という意味でもあると言われています。

その意味の通り大切な人との別れ、特に死別を想起させるような歌詞であり、この曲のどこか冷たく、儚い雰囲気を生み出しています。

この曲は医療系ドラマ「コードブルー」の主題歌であり、間違いなく人の死と別れを意識した曲作りになっていると思います。

アルバムジャケットにも、夜空に光る花火ではなく、氷の中で光る花火が描かれており、力強さよりも儚さが強調されています。

HANABIのジャケット写真

このようなダブルミーニングは、漢字や英語などの単語でなく、ローマ字、平仮名、片仮名などの音の情報だけの題名によく見られますよね。

2.ストーリーの大意と展開

次に、この曲のストーリーと展開の仕方を考えていきます。

この曲のストーリーは、

大切な「君」の死を乗り越えていく「僕」の物語

ということができるでしょう。

この物語が、秀逸なパートごとの役割分担と共に展開されていきます。

具体的には、

Aメロ、1番Bメロ・・・「僕」の性格の説明

2番Bメロ、Cメロ・・・心情変化のきっかけとなる「僕」の気付き

サビ・・・「僕」の心情変化

というように、パートごとの描写に明確に役割が振られてています。

以上を踏まえて、歌詞を細かく見ていきましょう。

open.spotify.com

3.歌詞考察

3.1.ネガティブな自問自答

HANABI【Mr.Children】歌詞の意味を考察!”生きてる意味はあるのか?”と問うあなたに贈る歌 - FRAMU.Media

主人公の「僕」は、何か上手く行っていないことがあるようです。もしくは「君」に関するショッキングな知らせがあったのでしょうか。

「僕(だけ)が生きる世界に価値はあるのだろうか」「全てが無意味に思える」と、かなりネガティブ思考になっており、「疲れているだけ」と思い込みたいほど落ち込んでいます。

だからといって立ち止まっている時間はない、忙しいこの現代社会を嘆いており、頭では前進しないといけないと思っているのに心が追い付いていない状態です。

 

3.2.道を示してくれた「君」はもういない

HANABI【Mr.Children】歌詞の意味を考察!”生きてる意味はあるのか?”と問うあなたに贈る歌 - FRAMU.Media

これから先の目標や生きる希望を見失いかけている「僕」。考えを巡らせても、止まってはくれない日常の中で答えはまとまりません。

ここで初めて「君」が登場します。「僕」は、いつも行き詰まった時に茶化して気持ちを軽くしてくれた「君」を思い出します。しかし、「吹き飛んだら〈いいのに〉」という歌詞から、もう暗闇を照らしてくれた「君」に会うことはできなくなるということが分かります。

 

3.3.拭い切れない悲しみ

HANABI【Mr.Children】歌詞の意味を考察!”生きてる意味はあるのか?”と問うあなたに贈る歌 - FRAMU.Media

1番のサビです。ここでの「花火のような光」とは、「儚く消える君の命」だと解釈することができます。美しくも消えてしまう、そう分かっていても「君」の存在を諦めきれない「僕」の心情が分かりますね。

「誰も皆~願っている」の部分はA、Bメロで描写されていた留まることのない日常や現代社会を表しています。ただ「僕」に残されたのは、「臆病風に吹かれて」「波風が立った」ネガティブな世界。それを愛し、生き抜くことができるかなぁ?と自信なさげに「君」に問いかけているようにも感じられます。

「皆頑張って生きているのに、僕は進むことができていない」と思い込んで自己嫌悪に陥ってしまうこと、よくありますよね。「僕」の心にかなりの負荷が掛かってしまっているかもしれません。

 

3.4.空元気の虚しさ

HANABI【Mr. Children】歌詞の意味を考察!美しくも儚い世界観を紐解く! - FRAMU.Media

ここでは、「僕」が自分自身の嫌いな部分を吐露しています。過去を引きずって立ち止まってしまうのが嫌なあまりに空元気で明るく振舞ってしまい、納得しきれていないのに立ち直ろうとしている自分を責めてしまっているのかもしれません。

 

3.5.初めての転換点、だが…

ここで「僕」は、「笑っていても泣いて過ごしても平等に時は流れる」という、当たり前ですが大切なことに気づきます。「なら笑って過ごそう」と前向きになれれば良いですが、ボーカルの桜井さんは「平等」の部分を潰し気味に歌っており、「なんで平等なんだよ、立ち止まる時間をくれよ」という心の叫びにも聴こえます。

後半2行は切ないですね。「君にも未来はあるの?」「未来は〈僕ら〉を呼んでるんだ、まだまだ一緒に生きたいよ」という思いが伝わってきます。

 

3.6.徐々に「終わり」を意識し始める

HANABI【Mr. Children】歌詞の意味を考察!美しくも儚い世界観を紐解く! - FRAMU.Media

2番サビです。別れを完全に拒絶していた1番と異なり、徐々に「君」との時間の終わりを悟っており、もう残り少ない会える機会を味わい、今まで「僕」の世界を彩ってくれたことに感謝を伝えています。

この曲で「君」が笑うのを想像しているシーンは2箇所ありますが、どちらも「暗い」「単純」といった、決して良いとは言えない「僕」の性質について笑っています。これは、ただ楽しいから笑っているだけでなく、良い部分も良くない部分もひっくるめて微笑みを向けてくれていた「君」の存在の大きさのようなものを感じさせます。

 

3.7.いよいよ前に進む決心をつける

HANABI【Mr. Children】歌詞の意味を考察!美しくも儚い世界観を紐解く! - FRAMU.Media

Cメロです。ここで、「人の心は滞っていると腐ってしまう。新しい経験などで心を揺らし、新鮮な気持ちで水のように前に流れていきたい」と、前に進む決心をつけます。

実は「HANABI」という曲はこのCメロのフレーズを軸として作詞されています。桜井さんがペットの金魚を弱らせてしまった時に、ペットショップの店員さんの「水は流れることで新鮮な空気を取り入れることで腐らない、逆に水が滞っていると鮮度が落ち、生き物は死んでしまう」というアドバイスを受けてこのフレーズを思い付いたのだとか。

 

3.8.吹っ切れた「僕」、そして感動的なラスサビ

HANABI【Mr. Children】歌詞の意味を考察!美しくも儚い世界観を紐解く! - FRAMU.Media

1番で別れを拒み、2番で何度でも会いたいと思っていた「僕」は、前に進むために「君を強く焼き付ける」ことを望みます。このフレーズによって、「もう一回」の解釈も1,2番と少し変わってきます。

1,2番では「もう一回君が生きられる可能性を探したい」「もう一回君に会う機会が欲しい」と、「君と過ごす機会」に対して「もう一回」と言っているような気がします。

対してこのラスサビでは、「もう会う機会はこれが最後なんだ」と悟った「僕」が「この最後の機会の中で、全ての瞬間の君を何回でも焼き付けておきたい」と、終わりを受け入れこれから前に進んでいく者の寂しさと力強さが混在する「もう一回」となっており、より感動的です。

後半部分は、1番のサビとほぼ同じですが、唯一「誰も皆悲しみを抱いてる」が「誰も皆問題を抱いている」に変わっています。これは、悲しみから立ち直ることで一杯一杯だった1番と、自分自身の成長のための課題に目を向ける余裕ができたラスサビとの対比構造となっており、「僕」が完全に吹っ切れたことがよく分かります。

ただ、「君」の存在を完全に忘れることはなく、ふと会いたくなった、寂しくなった時に「もう一回、もう一回」と焼き付けた記憶を思い返しながら力強く前に進んでいくという締めくくりとなっています。

 

4.終わりに

いかがでしたか?今回説明したものは、数ある解釈のうちの1つに過ぎませんが、よりこの曲を楽しむきっかけになれば幸いです。それでは。

youtu.be